円通寺


これは、芝浦工業大学の建築研究会内にて行われた、
一年生自主見学会A班プレゼンテーション
で使用された資料を再編集したものです。

画像はクリックすると大きくなります。


今回私たちが見学会で見る建造物を探すため建築マップを調べ、
円通寺を選んだ理由は、日本寺院なのにエキゾチックな建物で、
普段目にする寺院とは明らかに違うデザインであり、
それに重ねて我々のイメージする「浅草寺」のある伝統的な浅草の町とはかけ離れていたからである。



概要
設計 原尚建築設計事務所
構造 池田建築設計事務所
設備 仁設備設計
施工 岩本組
敷地面積 311.39m2
建築面積 217.84m2
延床面積 781.88m2
階数 地下一階 地上三階 塔屋一階
構造 鉄筋コンクリート
工期 1989年5月〜1990年1月

当初改築のつもりで依頼されたらしいが法規上の理由と老朽化のため改築不可能と断定され、新築となった。
当初住職は木造建築をイメージしていたが、この地区一帯は防火対策地域に指定されているため木造建築の認可が下りなかった。
全体は禅の「物にこだわらない」「飾らない」精神のイメージから、装飾性を排除しコンクリートの打ちっぱなしとした。
外見は釈迦が悟りを開いたブッダガヤや法隆寺のデザインを利用し、正面の丸いガラスは禅僧のよく書く空を表す円をイメージしている。
寺は本来宇宙の真理の受信基地でありそれを人々に伝える発信基地でもある。
その為屋上にはそれを考慮してアンテナのようなデザインが施されている。



↑地下墓地




↑地下墓地天井部の壁画


元々予算が少なく土地も狭く檀家も少ない中で地下に墓地を作り、それを販売する事によって資金を作る事になった。
都内の墓地不足と檀家の人たちの彼岸や盆の参拝時の利便性も考慮されている。
天井全体は上の写真のような絵で埋め尽くされている。






内観は普通の寺でよく見られる飾り物を一切なくし、
インドや奈良の寺院のように本尊をより明確にして精神の集中を図っている。
仏像を安置する須弥壇もコンクリート打ちっぱなしで作り内部をすっきりさせた。



吹き抜けの上にある天窓から光が降り注ぎ、仏壇を神秘的に演出している。後方の円には金箔が施されている。





洋↑と和↓の応接スペース




円は禅僧のよく描く空のイメージである。



↑内部から見た図


↓外部から見た図







天井は特殊で複雑な細工が施され、建物の個性を強調していた。これにも金箔が施されている。







まとめ
住職の話をきいてみると本堂の大きさに比べ、空調設備が建物とあっていないため夏は暑く、
冬は寒いというコンクリートの欠点をカバーしきれていない。
本堂の入り口の扉を建築家の意見で引き戸ではなく、開き戸にしてしまったため扉と床の間に隙間ができてしまい、
外の埃が本堂に入ってきて畳が傷みやすいなど、デザインに先行したあまり、機能を軽視してしまっているように思われた。
建築家は単なるモノづくりのデザイナーではなく、人々の生活や幸せを具現化する職業であると私たちは考える。
しかしこのような現状を目の当たりにして疑問を感じずにはいられなかった。
良い建築とは構造やデザイン、ランニングコスト等が適切なバランスであろうと考える。
普遍的なデザインの多い寺社施設の中でこのような寺を限られた予算の中でデザインした事はかなり評価するべきだと思う。
生活環境の不備が唯一の欠点で、デザイン的にはかなり魅力的に感じられる建築だっただけに残念だった。



感想

今回の見学会は、公共建築では無かったため、これから建築を学んでいく僕たちにとって
ただ建築を見るだけではなく、その建築を生活の拠点とされている方々のご意見をお聞かせ願ったり、
建築を、建築家からのみの視点だけではなく、
実際に生活されている建築を専門外とされている方の意見を直に聞くということの大切さや、
そうすることによって得られる知識を蓄積していくことの重要性も学べた。
建築の専門家からの視点でいつも見ていると、凝り固まった理論的な思考しかできない気が する。
今回はご住職のお話を聞くことによって、そういったこととはまた違う視点から建築を学べたと思うので、
これから建築を学んで行く立場の人間として非常に有意義であったと思う。
そういう意味でも、今回の見学会は単純におもしろかった。
しかし今回は急におじゃましてしまったため、ご住職を初め、ご家族にご迷惑をおかけしてしまった。
そのあたりの段取りも重要だということも学べたかと思う。



A班 班員
大朝将平
松岡悠
櫻井淳
相馬淳志
前田信彦



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