☆ 柔軟な規格化

アアルトは、<インターナショナル・スタイル>と、建築の機械論的な規格化もしくは工業化とに対して、一貫として反対した。彼は工業生産に対して<柔軟な規格化>という考えを唱えた。
<世界中で最もすぐれた規格化委員会は“自然界”である。しかるにその“自然界”においては、規格化は単にあるいはもっぱら、考え得る最小のユニットすなわち細胞だけに限られている。そしてこの結果、図式的な厳格さから全く解放された、何百万といういう融通無碍の組み合わせがもたらされ、かつ非常な豊かさと、有機的に成長する形態物の永遠の多様性とが実現されているのである。建築における規格化もこれと同じ道を辿らなければならない。>

アアルトは規格化の問題を、個性の要求という問題に結び付け、規格化は<個人的な思考に対する産業の暴力の一形態>とみなした。
<どうしたら設計と自発的活動に基づくイニシアティブとが一緒に結ぶ付くのか?> <どうすれば破壊することなしに機械を征服できるのか、人間を産業化することなしに産業を維持するには、一体どうすればよいのか?> これらは、今日も依然解決されていない問題である。

<私は生活には非常に多くの状況が含まれ、そしてそれら全体の組織はあまりにも粗 野なままであり続けているという風に考えている。建築家に与えられた課題は、生活というものに対して微妙なテクスチャーを与えることである。>