◇第2の様式

篠原は50年代、60年代の日本の伝統空間から70年代には“無機質の空間”への転換を試みる。 ここでは自然と密接な関係を持つ伝統構成の有機的形態から、無機的形態へ主題を展開したのだが、これはモダニズムへの回帰を意味するのではない。日本の様式の中かから見付け出した“ キューブ” を用いモダニズムの空間を横断する手がかりを得ようとしたのだ。
そのため彼は日本の伝統構成の本質である分割方法でもヨーロッパの伝統構成の本質である連結方法でもない新たな空間の構成手法を求め、結果たどり着いたのが“狭い谷間と広間の複合空間”、つまり“ キューブ”と“ 亀裂” による構成方法である。ここでの建築の主題は空間の無機性を表現することであって、抽象的な幾何学形態や言葉によって表わされている。