【Model-1】閉じた空間を搾孔する3次元的な孔

  「ヘラクレスの柱」より、図形要素である2本の
  円筒が対称になるような軸線が生まれ、その軸線
  に対して全てが対称に配置されるという知識を有
  した図形モデルが導き出される。


【Model-2】心理的な距離を発生させる

  一定面積内で住居内部の気積を大きくとるために、
  全体を規定する図形要素として細長い直方体が導
  入される。これにModel-1で出来た要素が組み込
  まれ、図形モデルが完成する。


【Model-3】〈門〉の生成

  地中海を3次元的な孔に仕立てている。地中海の
  門である「ヘラクレスの柱」から導かれた円筒が、
  〈内核〉を3次元的な孔に仕立てる〈門〉として
  照明塔になる。「ヘラクレスの柱」の「柱」にあ
  たる照明塔が、この建築の基盤となる建築モデル
  である。
  知識:多層構造、様相論


【Model-4】下向的建築 (反転1)

  「原邸」の敷地の斜面に沿って、照明塔によりつ
  くられた軸線上に4レベルの床と階段が出来る。
  従来の上向きの建築に対して、下向していく〈谷
  の建築〉がつくりだされる。〈内核〉を構成する
  要素としての建築モデルである。


【Model-5】明るさの反転 (反転2)

  軸線に沿って屋根の部分にスカイライトが開けら
  れる。白に近いグレイ一色で仕上げられた壁面は、
  スカイライトからの光によって心理的に屋外より
  明るい空間をつくりだす。建築要素であったスカ
  イライトが知識を有した建築モデルとなる。


【Model-6】造形上の反転1 (反転3)

  〈内核〉の構成要素となる個室とそれにかかるア
  クリル板でつくられた半透明のドームは〈第2の
  屋根〉と呼ばれ、家のなかに家をつくることとな
  る。


【Model-7】造形上の反転2

  Model-2の空間を規定する図形要素の直方体が外
  壁になる。外観が環境のなかに消えるように、あ
  るいは沈むように、外壁は平凡にする。凡庸であ
  ればあるほど、内部の〈内核〉が輝いてくる。こ
  れも建築モデルである。


【Model-8】住居に都市を埋蔵する

  反転により出来た3つの建築モデルが照明塔に沿
  って組合わさり、建築モデル〈内核〉が完成する。
  これは住居のなかの街路や街角を意味し、〈内核
  〉を中心に都市が広がっていく意識を住み手が持
  つことで、〈住居に都市を埋蔵する〉という概念
  が成立する。