建築学科/ 建築工学科/ 環境システム学科/ デザイン工学科/


■建築学科

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aj13003 秋山智香

生活軒 -増加する一人に対応する公共空間の提案-

現代の日本は世界的にみて、人々が孤立している。人は一人だけで居続けることで、自分の存在意義を消失させてしまう危険がある。しかし、同時に職場や学校という義務でいかなければならない場では、人々の関わりには問題が起きている。様々な一人が集まる池袋を対象敷地にとり、各々が個人としていられることが当たり前になれる公共空間を提案する。

aj13007 一色隆徳

出会いを紡ぐ 地方教習所の再考-

日本でモータリゼーションが進み、自動車教習所が爆発的に増加したが、利用者の減少により1992年をピークに教習所の数も減少している。教習所の必要性が薄れ始め、負の遺産となりつつある。そこで自動車教習所のもつ要素を、異なる要素に結びつけることによって、モータリゼーションの弊害をそれによってうまれたものを利用し解決する。

aj13009 石川彩

車窓紀行 〜寂れゆく潮騒の街における新しい居場所の提案〜

鎌倉市腰越商店街。産業化や車社会化に飲み込まれ、人の居場所がなくなってしまったこの場所に、人のための小さな居場所を作り出す。この街に住むさまざまな世代が「個」へと切り離されている現在の関係性は、小さな居場所において「共」へと変化し、寂れゆく商店街は再び活気を取り戻す。そして商店街に溢れ出す腰越の街の活動を、江ノ島電鉄線の車窓は優しく切りとるだろう。

aj13011 磯涼平

狭間のアジール-絶対的外部としての都市公園の提案-

人間味とは何か。私の卒業設計はそこから始まった。資本主義社会は、「都市はこうあるべき・人間はこう動け」と操作し、清潔な街を形成した。清潔な街にふさわしくない活動、人間の灰汁の部分は排除していった。しかし、その灰汁にこそ、人間の味があったと私は考える。山手線と明治通りの間、大都市東京の狭間にある宮下公園を、資本主義に排除された活動を許容する場所として計画する。

aj13013 伊藤健

SHINBASHI COMPRESSORE -「広場性」の継承と更新-

パブリックスペースが方便のように使われている。今、新橋駅前のSL広場も再開発計画によってそのあり方を問われている。新橋のSL広場は歴史的に大衆が行き交い、交流する場として栄えてきた。この場所を方便としないためにも、パブリックスペース(広場)の側からそのあり方を考え直し、これまで以上に新橋サラリーマンの活力の源となるような場を提案する。

aj13020 扇澤拓也

裏之浦

日本三景がひとつ、宮島。厳島神社で有名なこの島では、多くの観光客が訪れる観光地としてたくさんの人々を魅了する。しかし来訪者が訪れるのはこの島のほんの一部に過ぎない。厳島神社を中心に発展している宮島はかつて、島全体を崇め奉る島信仰のご神体としてあった。神社だけではなく、人の滅多に訪れない島の裏側にも関心を向けさせる足がかりとしての建築を提案する。

aj13022 大久保憲一

ホメオスタシスの地筋-旅籠を用いた恒常的都市の提案-

恒常性を無くした都市は、死に絶える。これは都市近郊の開発地区を周辺地区との断絶を無くし、恒常性をもった生命都市の提案である。品川では開発地区と旧品川宿地区が分断され恒常性を持てずにいる。日本の玄関となる品川に、宿場町の旅籠を用いた宿泊複合施設を設計する。品川・日本の魅力を探せるテナントをもち、その土地の高齢者が営む旅籠が、都市を循環させ品川の恒常性を育む。

aj13023 大澄慧悟

隣人のガイジン-外国人労働者と共棲する混交住居-

グローバル化が進み日本でも在留外国人が増えつつあるなか、ブラジル人労働者の多い静岡県浜松市で、日本人と「ガイジン」とが混ざりあって暮らし、その中で生まれる新しい関係の形成を助ける集合住宅の提案。

aj13025 小川綾乃

名残のタテウリ

人々が想う故郷とはどのような場所だろうか。多くの人は自然に溢れた田舎故郷を思い浮かべるだろう。しかし実際はハウスメーカー住宅が建ち並ぶ無機質な街“ベッドタウン”に住む人が増加し、故郷になっていく。だがそのような街に人は帰らない。いつでも自分を受け入れてくれる場所“故郷”は消失してしまうのか。ハウスメーカーの在り方を再考し、ベッドタウンを“故郷”に変えていく。

aj13026 小川航輝

家守のイエ 斜面を緩やかにつなぐ宮大工育成所の提案

広島県尾道市。斜面密集市街地と呼ばれるこの地域は少子高齢化や車社会の影響で空き家の問題が深刻となっている。現在は尾道空き家再生プロジェクトが中心となって空き家の改修は徐々に進んでいるが、専門家の意見を必要とする斜面地物件の改修が遅れている。この場所に全国で不足している宮大工の育成所を計画することで改修作業を促進させるとともに日本の伝統技術を後世へと伝える。

aj13030 加藤祐太郎

かつてカナタの巧妙-情報共有空間での邂逅-

邂逅の場を設計した。繋ぐのは情報。情報を発信したい、受信したいに応える。対象敷地は群馬県高崎市。江戸以前から現代まで続く歴史と現代から未来へ発展していく地方都市。かつては中山道を通って高崎に訪れる人々と交流があったが、現代は高崎を訪れる人々が多いにも関わらず、高崎の住民との交流はない。両者を繋ぐ場が必要である。道の延長線上で過去と未来が出会い、今を形成する。

aj13034 川俣洸介

Re-creation 農村の未来を創造する

農業従事者の減少に伴い、農村は消滅しようとしている。若者は都市部へと集中し更新の止まった農村では、担い手の居なくなった農地が荒地となり、かつての農村風景を蝕んでいる。住宅と農地がつくり出す美しい農村風景。それらを創り出すのは、他でもない農村で暮らす人々である。農村で暮らす人々と、30年後そこで暮らす次の世代の人々の為の、農村の未来の風景を提案する。

aj13035 神崎潤

豊洲怪隈-民話的手法を用いた場所性の創出-

健全な管理社会には怪しさや不合理を排除する力が働く。都市型コミュニティの表面化が進む中、深層的な対人関係を築くための怪しい隅っこ「怪隈」が必要なのではないか。土地の歴史を踏襲せず計画された豊洲2.3丁目。この都市に点在する怪しさや不合理の上から民話を想定し怪隈を構築する。深層的な対人関係を取り戻す小さな場所、これからの豊洲の歴史の種として怪隈は街にばらまかれる。

aj13038 北口絵梨奈

Arabesque #1 −音楽の構成から豊かな空間を築く−

機能やプログラム、社会性が重視された建築。そこには人々の自由が損なわれている。意味を漂白した後の建築のあり方ではなく、包容力を持ち建築の空間そのものが意味を持っているような、魅力的な空間を築くことはできないだろうか。人々が自然と惹きこまれていくような空間を提案したい。それを、私がずっと親しみ魅力的に感じてきた音楽の要素から導き出していく。

aj13040 九里そよ

雨をあらわす-撥水性都市における水と建築のあり方-

水の都と呼ばれた東京は、今では水を嫌い排除する撥水性都市となった。人と水の関わりは消えた。しかし、天から地という縦方向に広がる雨は絶えず都市を包み込んでいる。雨という水の存在は隠されているだけで、確かに都市のうちに存在していた。隠すことなく、その存在をあらわすことで人と水の関係を創出し、水を取り入れることで豊かになる建築の提案を行う。

aj13045 紺野雄輔

すべてを失った都市は幸福を与える ~陸前高田における”自己生成する都市”の提案~

東日本大震災による津波の被害に遭った陸前高田という場所に対しての、発災後6年が経過した現在への提案。津波とそれ以降続く大規模な復興事業によって変化を続ける旧市街地と、6年間の間に生活の場を移動させた住民。土地と人との再接続を行うために、幸福を伴う内発的動機による住民の創作活動を助ける建築を考える。

aj13050 斉藤有生

生業の廓 多様な生き方/働き方のための新しいオフィスの提案

多くの人間は一生のうちの約40%を仕事に費やしている。 働くという行為が私たちの人生を左右していると言っても過言ではなく、限りある時間のなかでいかに「豊かに働く」か、は重要なことだ。私は、日々の長時間にわたる<通勤>は豊かに働くことを阻害していると考える。これに対し、郊外にいくつかの「分社」を設けることで、豊かに働く契機となる<郊外型オフィス>を提案する。

aj13057 関本容子

道くさ食卓への招待-食でつながる他世代交流施設-

子供と高齢者の孤食が問題になっている現代。その背景には子供の貧困や、高齢者の高齢化など現代問題によって孤立化していることが影響している。この現状が特に顕著な板橋区。しかし区民農園数最多、農業まつりがあるなど、農業が愛され親しまれている地でもある。板橋区の特徴である農地を使って、子供と高齢者の孤立予防のために外出したくなる、食を中心とした多世代交流施設の提案。

aj13060 高橋昂平

三つ子の魂百まで -国際社会における子供の居場所-

急激に進む国際化。移住するのは大人だけではない。そこには子供もいる。子供達は人間の人格形成に重要な時期に異文化での生活を強いられる。そうしたストレスから外国人児童は引きこもりになる傾向がある。また車の普及、テレビゲームの普及により日本の子供達の居場所は室内化している。子供達が外に出て様々な文化、人に出会い成長できるような国際社会における子供の居場所を考える。

aj13061 高橋友洋

堆積楼

高度経済成長という社会的要因によって生産的かつ革新的で、エネルギー効率の良い都市が生まれたが、今その都市は建築、インフラの老朽化、利便向上等における更新の時代を迎えつつある。本提案ではその更新によって消えていく風景、町並みを1つの建築の力を用いて人々の記憶へと再起させるものである。

aj13062 武田恭明

第五世代の原風景

開発で均質な街並みへと変わってしまった台地と、街並みを保っているが高齢化が進む谷津が混在する千葉市稲毛区。区内は起伏が多く、微細な変化に富んでいる街であるにもかかわらず、傾斜地沿いには谷津に対して大きな壁となっている集合住宅が立ち並んでいる。住居の形や街の構成を分析しつつ、それらを再構築することで、傾斜地に新たな生活風景をつくりだす。

aj13064 田中陸美

地縁カゾク 細分化した家族の再構築

日本の人口は減少している。生涯独身の単身者や家庭を持たない夫婦の増加に伴い、家族は細分化していく。将来、血縁で構成された家族という最小集団単位は消滅するだろう。家族が消滅し、バラバラになった人々は新たな集団を求め、その中で再び生活する。再開発が進み生活が均質化していく西新宿に、様々な文化が混ざり合い活気のあった新宿の記憶を留めるシェアハウスを提案する。

aj13065 田畑美月

おもてなしの裏舞台−商業空間における境界の再編−

おもてなしのニッポン。日本人は相手を想うことで様々な所作を生んできた。しかし現在、経済的合理性に蝕まれたもてなしに変わってしまったように思う。華やかに繕うオモテとそれにより暗がるウラの差は、明瞭なものとなった。だが本音と建前社会の日本がもつ二面性は、悪いものではない。本提案では境界を再編することでオモテに生きる裏舞台を創出し、商業空間の在り方を問いただす。

aj13067 所 邦昭

時層の旅人 ー形骸化する観光都市の再構築ー

古都奈良。 2045 年のリニア開通に向けてそのポテンシャルはさらに大きくなりつつある。集客目的に偏重した観光化が進められる中、生活と乖離していく観光。培ってきた歴史がつくる地域に根ざしたコンテクストを読み解き、町を再構築すると同時に、地域住民と観光客がこれらの資源を享受しながら利用できる、そんな日常性と非日常性の交歓を目指した新しい観光都市の在り方を提案する。

aj13074 長谷川由佳

まちを継ぐjunction -再開発における商店街の継ぎ目の設計-

再開発によってまちのアイデンティティが失われ、均質化していく現代のまちなみ。板橋区大山では、まちの象徴とも言える商店街が再開発によって分断され、まちの表情が大きく変わろうとしている。ちぎれたまちを継ぎ合わせ、まちの歴史を未来へと継ぐ。長年更新されてきたまちがこれからも変わらず更新し続けられるための、"まちの継ぎ目"を提案する。

aj13077 深津亮太

猫実げにうすろーかるぱれーど 祭り文化の継承と仮装世界への警鐘

縮退社会を迎えたのに、ディズニーのような大資本に任せた闇雲に空き地に建築する開発を進めているが、いつまで頼れるのか。環境・生態系の要となっている空き地が多い浦安猫実に、その地に根付く賑わい文化としての祭りによる、空き地を守る街の心臓となる地域住民の交流施設を建築する。ディズニーの影に忘れ去られた土地性を継承する新しい開発としての都市の更新・新陳代謝を目指す。

aj13078 福山智大

灯台下暗しの町に、 —今日的社会における改修を用いた都市計画—

本計画は自身が設計を行う時代においての設計者の役割の探求を目的としたものであり、人口が減少し都市が縮小せざる負えない時代における、改修を用いた都市計画である。村野藤吾の建築群によって構成されていた都市軸に新たな計画を行うことで、衰退した既存建物足元の活性化、そして縮小する都市において市民をつなぎ合わせる都市空間を創造する。

aj13080 藤本亮太

がんばらない~「へた地」の再定義による分散型都市公園の提案~

がんばらないで過ごせる場所がいくつあるだろうか。職と住の離別が引き起こしたコミュニティの縮退は頑張る時間を増やすと同時に、がんばらないで過ごせる場所を少なくしていった。どんな街にも存在する、都市計画によって生まれてしまう「へた地」。私は利用価値の低い「へた地」を人々の憩いの場として再定義することで、住まいのそばに小さな「がんばらない」を過ごす場を表出させる。

aj13085 松村拓哉

Ver. Mentalism 物質主義に対する反抗声明

これは都市の際にある2つの場を共変させる提案である。物質思考によって贋物だらけになった現代社会に対して、木材の生産から加工・消費までのシステムデザインを提案する。それぞれ木材生産の場を檜原・消費の場を晴海とし、木材システムと各土地固有の問題を複合させることで物質社会を中和することを目指す。Tag; wood, timber, system design, aging, children, Hinohara, Harumi

aj13094 山本光乃

墨堤花柳舞

戦後東京は高度経済成長を経て、消失と開発を繰り返し、発展を遂げた。東京という都市の中で建築、人、物、文化が現在も変化し続けている。流動的な都市の中で江戸時代から発展してきた花街を残すため、時代とともに変化しながらもその場所にあり続ける隅田川に芸者のための舞台を提案する。風光明媚な江戸の舞が未来へと受け継がれる。

aj13097 渡辺薫

見まもりの縒りみち

現代日本における深刻な問題である、「少子高齢化」。子持ちの親が持つ、家から近くて月謝の安い園に入りたいという願望と、引きこもりがちな高齢者が外へ出かけ活躍の場を増やす仕掛けを、商店街の中に託児所をつくることで同時に解決する。衰退しきった商店街が親しみのある「まち」へ生まれ変わる提案。住民によるDIYでコストダウンを図るとともに、まちに興味や愛着を持ってもらう。

aj12118 山中森

交の鉢

1960年代、交通事故にあう子供達を道から公園へと隔離し、交通ルールを学ばせる目的として交通公園が作り上げられた。現在ではその目的を果たすことなく物珍しさだけが取り残され、車社会導入により形成された移動するためだけの道遺産と化している。道の本来もつ連続的かつ公と私が入り混ざる生活体験の交流の場を再考するため、交通公園の道に路上園芸店を設計する。

■建築工学科

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ak13010 池田章人

排水立坑の開渠

都市治水の役割を果たす地下調節池-排水立坑。 現代において治水は生活維持のために必須であるのにもかかわらず、その存在は孤立している。敷地は麻布十番地下調節池-排水立坑。地下50メートルのヴォイドが存在する。都市で失われる親水性を改新し、自分たちの生活している環境をリマインドさせる土木的建築を提案する。

ak13017 大坪元気

超高層住宅足元再編‐限界マンション化への抵抗‐

工場跡地に建てられた数棟の超高層住宅、いわゆるタワマンはこの地に一時にして約3500戸の住宅を供給し、このまちを一変させた。ニュータウン的に生まれたこの住宅群は、いずれ建物の老朽化や住人の高齢化を抱えた、限界マンションとなるだろう。ふもとに広がる店舗が縦積みにされただけの商業施設と、法規上置かれた公開空地を再編することで限界マンション化に抗う

ak13040 小濱祐里子

多摩川堤沿い再編計画-羽田に活きる遺構-

その昔暴れ川と呼ばれた多摩川。その水害の多さから、川沿いには多くの遺構が残されている。羽田の旧レンガ堤もそのひとつである。かつて漁師町として栄えた羽田の風景を残しながら、旧レンガ堤を含んだ新しい建築として生まれ変わる。新しい堤防によって悪化した現在の住環境を改善しつつ、単なる物体として何の意味も持たない遺構を建築の一部として機能させ、人々の生活に取り込む。

ak13042 小室周起

戦争花嫁ー現代における旧軍用地と市街地の狭間の建築ー

海軍の街、呉。戦艦大和などを筆頭とした戦争の歴史で知られるこの街に、戦後10年間オーストラリア軍が進駐した時代に渡豪した戦争花嫁がいたことは、ほとんど知られていない。呉において明確に存在した軍用地と市街地の境界線を繋ぎ、その狭間を生きた戦争花嫁たち。その存在の残り香のある場所で、現代における狭間の媒体を設計し、提示する。

ak13064 高場涼太

生の永続−時代の変化が生み出した生者と死者の距離−

友人の一回忌にて訪れた地方の墓地で、区画ごと荒れ果てたお墓が私の目に留まった。近年、故人や人の死に対する価値観が薄れ、先祖崇拝が途切れようとしている。そこで、非日常(墓地空間)と日常(人の生)の距離を縮めるべく、故人の永続を可能とする新たなシステムからなる墓地公園の提案を行うことで、今後より一層の深刻化が確実となっている墓地問題に改善を促す一手を打つ。

ak13073 永島明典

都市近郊型種子バンク-消えゆく生産緑地の活路-

敷地は東京都世田谷区瀬田。日本に生息する絶滅危惧植物と農作物の種子を保存する施設を提案する。地域に住む人々や学生に向けたエディブルスクールの開催を行うことで食への関心を高め、保存事業の社会的認知度の向上を図る。さらに、都心部近郊の都市農園を利用した種子保存施設の種子を更新するサイクルを作ることで保存庫内に常に新しい種子が保存され、都市農園の積極的利用も促す。

ak13077 西内修平

34.4

「気にするな。お前が悪いわけじゃない。お前がなんぼやっても無理やき。」 この町の人たちは生きることを諦めた。2012年に内閣府から公表された南海トラフ巨大地震における被害想定において、津波予想高が日本一である34.4mという数値に希望を失ってしまったからである。ここでは、そのような絶望的状況の中で都市・建築がどうあるべきかを提案する。

ak13085 廣川慎太郎

福岡城址三ノ丸の事実

福岡城址内に戦争の引揚者住宅が存在する。これは福岡市民でさえも知らない事実である。戦後の住宅不足のために建設された住宅だが、その後福岡市が都市計画区域に指定し移転交渉が始まった。移転交渉により約200世帯から約50世帯に減少した。さらに住人と国の間で賃貸契約をしている土地も2027年で契約が切れる。居住域を失う住人の集合住宅とこの場で起きた事実を記す博物館を提案する。

ak13086 深沢司

紡ぐ緑-都市に育む新たな縁-

地縁や血縁のような深い関わりは薄れ、趣味や興味といった限定的な価値観を共有することを求める現代の都市居住者は、コミュニティとして互いに干渉し合うことなく、重複した生活圏を持って暮らしている。生活の中で生じる価値観の相違を払拭するような新たな“祝祭性”によって、同一の場所に住む人々の共通認識を育む。その想いはやがてその新たな地域性という“縁” を生み出していく。

ak13088 藤吉佑馬

周縁の結合点-京成高砂駅におけるジャンクション駅構想-

私は千葉ニュータウンから大学まで鉄道により移動している。都心と呼ばれる駅までには何の目的もなく、もはや都市の余白である。しかし、余白には都心へ目的を持つ郊外居住者をまとめ上げ、再び都心へ排出する重要な役割を持つ駅が存在する。そんな駅をジャンクション駅と名付ける。千葉ニュータウンから都心への間にある京成高砂駅においてジャンクション駅のあるべき姿を模索する。

■環境システム学科

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br13005 阿部智也

立ち昇る雲−都市に風穴を空けて−

都市は今、足の踏み場もない。あらゆるものが何者かの管理下にあって、空間の余白はすっかり剥ぎ取られてしまった。誰のものでもない、そんな場所はもうないのだろうか。 西新宿に広がる高層ビル街は管理空間の最たるものだ。そしてその心臓部にあたる新宿駅西口駅前には、人知れず、空白地帯の断片が埋もれている。その小さな断片が、地面を貫き空へと沸き起こる、自由空間の端緒となる。

br13013 宇田川剛

劇場的ターミナル

観光業におけるパッケージング化によって能動性を失った観光客は漫然と都市を巡り、断片的な都市の一面しか感じることが出来ない。真の東京に出会うために人々に能動性を与え都市に発散させる。そして、真の東京に出会うことができるのである。

br13015 大塚健太郎

Parasitic City

対象敷地は南千住にあるJR貨物の隅田川駅。陸の孤島と化しているこの貨物駅がもつ空間特性とシステムをリ・デザインする。人や建築がパラサイトできる環境を構築し、本来都市が持つべきダイナミズムを創り出す。

br13025 北川瑠未

都会の留まり木-“動詞”を生み出す生物の居場所-

東京都都心部で問題となっているヒートアイランド現象の緩和策として、屋内で行われている行動を都心部にある公園緑地に展開させるしかけをつくりだす。これにより、人工空調に頼る時間を減らす。 そのしかけとは、対象敷地を訪れた人が個々にとって居心地のよい空間をつくり出し、その場所を繰り返し利用したくなる、都会の「留まり木」となる建築を提案する。

br13032 小谷碧

らしさを継ぎ足す「Acive Arcive」としての建築

「Acive Arcive」 元あるその土地らしさから時の流れの中で新たな資源が生み出され、元からある良さを残しつつ書き換えながら土地らしさに継ぎ足され持続的に変化し続ける土地の記憶システム。このシステムを建築プロセスのプラットフォームとして台東区谷中で生まれた新たな資源を「谷中らしさ」に継ぎ足し更新していく「Acive Arcive」としての建築を提案する。

br13033 小林貢平

Cooccur Bazaar

地域固有の文化とは無関係に生まれるショッピングセンターと消費者の外出を減少させたインターネットショッピングによって商業と建築の関係性はなくなっている。その結果、かつての大山街道の特徴は失われつつある。大山街道の質をそのまま復活させるのではなく、新たな生活様式と古の賑わいを未来に向けて再統合し、新たな価値を生み出す。

br13048 鈴木聖弥

地域の魅力を集約・発信する建築-地方空港からの試み-

静岡県島田市には最後の地方空港がある。何十年も前の地方空港構想によって作られた無用の長物は様々な交通インフラの結節点となった。 過疎化するこの地域を活性化する起爆剤として、地域の魅力を集約・発信する建築を提案します。

br13052 鷹觜優輔

四海兄弟-蔵前のものつくり旅館-

私たちにとって、グローバリゼーションの波は諸外国だけのものではなく、異文化、人種、性別、宗教を受け入れる多様性が必要とされる。本提案は、おもてなしという日本固有の文化、精神性をものつくりに置換し、台東区蔵前の隅田川沿いにて、地域に根差した職人が観光客を受け入れ伝承する。“ものつくり旅館”を通して宿泊の活動域を拡張し、新たな相互性を築いていく。

■デザイン工学科

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cy13002 阿南琢真

都心駅とブリコラージュ文化渓間

利便性向上・経済的発展を主たる目的とした従来の鉄道駅開発概念に対し、そこで生まれる「商業的にぎわい」に異議を唱え、経済空間付加から文化空間付加を取り入れた新たな転換を目論む。 多くの人が往来する都心の駅直空間に文化集積路(渓間)を設計し、「まちの顔」を演出するとともに、利用客や地域住民らの主体的なアクティビティから生まれる「活力的にぎわい」の誕生を望んでいる。

cy13005 石川有祐美

緑と住まう健康都市—植物を介したサードプレイスと現代病予防空間の設計—

多様なストレスによって発症する「現代病」の根本的な治療は、生活療法が重要とされている。 そこで、3つの世代に向けた職住近接のあり方と植物を媒体としたサードプレイスを提案し、ストレスを予防・改善しながら暮らすことを目標とした都市空間を設計する。 各エリアが互いに連携と交流をはかることで地域全体が食・職・医の面に特化した緑園健康都市のモデルとなり得るであろう。

cy13006 石川岳

朽ち果てる、朽ち生きる

時間の経過に伴う規則的な減築と再構築による空き家にならない建築とそれらが生み出す新たな都市のスタイルの提案。人の暮らしの記憶を残しながら自然に還元され、美しく朽ち生きていく。

cy13008 井上晃太郎

空の転生

人々の暮らしと都市の成長の在り方を再考する。従来の都市開発は土地の価値を高める一方、今までの生活の記憶や、所得に見合わない人を排除するといった負の効果もある。 本提案では、低未利用地に存在する建物を、クリアランスでなく減築し、外部とのつながりを与え、住人の暮らしに合わせて増築と減築を繰り返すシステムを提案する。人々の暮らしを街に開き、他者との結節点を創造する

cy13010 遠藤圭均

-港湾鉄道廃線路に直結する津波避難ビルの提案-

東日本大震災では津波により多くの建物が壊滅的な被害を受けた。今後大規模な地震発生に伴い、甚大な津波被害が予想される地域において津波からの一次避難施設として津波避難ビル等の指定・普及が必要と考える。 静岡県沼津市をケーススタディとし、近隣住民や観光客などが日常から利用出来るソフトと港湾地区のランドマーク的存在になりえるハードを兼ね備えた津波避難ビルの提案を行う。

cy13017 神谷奈那

百年手造 ー時代背景を糧とした多世代をつなぐ建築ー

多世代をつなぐ手作りのぬくもり。各世代の人々がその当時身につけていた小物や服の切れ端などを持ち寄り、「デコる」「盛る」といった行為により空間に歴史を反映させる。

cy13019 木村大輝

朗景のユリイカ

地方都市におけるサードプレイスの提案。日常にちょっとしたアクセントを加える施設と集合住宅の設計

cy13025 時雨
・内外反転:形態を保ったまま、三合院の庭と室内空間を内外逆転させる。また、土間のような屋内の「路地」空間を設けることなどによって、屋内と屋外空間の反転を実現させる。 ・Porus:ポケットパークなどを利用し、光や風が良く通る「多孔的」な配置計画を実現する。 ・古きを温ねて新しきを知る:来客の動線では清の時代の建物を全部通せる。近代以降の建物は現代的な建物に建て替える。

cy13026 杉山有夢

やわらかい家—環境に応じて変化する住宅—

快適な空間の条件は、時と場合に応じて変化してくることがある。そこで隣家との関係や住人の状況、気候の変化や自然現象などといった建築の周囲の環境に応じて変化することができる、可変性のある住宅の提案を行った。

cy13031 中平達也

変形する椅子-記憶に生きる 紙一枚の可能性-

「折り紙チェア」という組み立て椅子を設計する。折り紙の性質をヒントに、折り目と紙一枚の可能性を追求しインテリアを生み出す。 従来の折り畳み椅子に、折り紙の持つ独特な構造を組み込み、持ち運びやコンパクトな収納に役立つだけでなく、平面から立体が生まれる楽しさも大事にしたい。本研究で折り紙に秘められた可能性を感じて、建築的、構造の幅が増えることを期待したい。

cy13036 早坂淳一

都心市街地におけるサードプレイスを備えた開発提案

都市の魅力として挙げられるサードプレイス。それは単体では存在せず、なにかの付加価値によるものである。 神保町地域の将来像「文化を創造・発信し多くの人々を引きつける、にぎわいとふれあいにあふれたまち」を軸に、様々な専門の人が集まることで、新しい文化が生まれることを期待し、 クリエイターのための施設を設計する。この共用空間をベースにサードプレイスとして機能させる。

cy13038 平馬竜

離層の追復曲

建築は空間であり、空間は経験である。空間の経験は身体全てによってもたらされるべきであり、その経験は豊かさをもって癒しを与える。 光、水、自然、空気、重力、そして暖かな裸の皮膚。全ての調和が身体に豊かな経験を与えるのである。 抽象画家であるパウル・クレーの手法を建築に引用し、自然と調和したポリフォニーを生み出す温浴施設を設計し、人々に身体経験の豊かさを想起させる。

cy13045 安井雅人

ソ ダ ツ − 都市農業を発信する建築 −

ここで「育つ」食物は人の一部となり人は都市の一部となる。建築に生産・販売・消費という食の循環を介在させることにより、住まう者と訪れる者に生産と発信を機能させる。 そうして、やがては都市居住者に農業が再び浸透するような、原点回帰の発信拠点となるものを創造した。都市部における農業の発展あるいは、農文化の継承に添って立つ、すなわち「添立つ」建築となることを期待する。

cy13046 山崎眞人

磨耗する建築

都市計画の統一的な美しさを持つ巨大建築 が普遍化し、混乱した風景が失われようとしている。そこで、センター街を中心に混乱の中にある力強さを定義し建築に変えていく。