

建築空間のなかで、図式化されたごく少ない空間の形態のひとつとして、求心的空間が
ある。求心的空間における中心の概念は、幾何学に現れると同時に、伝統的にコスモロ
ジーの領域において提出されていた。アリストテレスは空間について多くを述べたが、
コスモロジーの領域において具体的なイメージを提起している。「天体論」では、場所
的な運動における単純な移動は、中心から離れる運動か、中心へ向かう運動か、中心を
めぐる運動でしかない。すべての運動は、これらの合成である。中心が優位にたつ図式
は、実際に建設された都市、あるいは多くの宗教的建築に見られる。エルサレムを世界
の中心に据えた世界図は、その典型例である。そうした図式と同じ根拠で教会と広場を
持つ小都市や建築を、我々は今日も多数見ることが出来る。
アリストテレスは、場所(トポス topos)の概念も定立した。場所の概念は、現在に至
るまで重要な意味を空間に与えてきたが、その要点は3つある。
第1 場所を境界によって規定したこと。
第2 場所が力をもっているとしたこと。
第3 物体は固有の場所をもつということ。
このうち第1の境界によって、アリストテレスは、世界が有限(界)か無限かという論
議において、有限であるという見解をとる。建築空間を対象にするとき、境界なる概念
なくしては計画を進めることはできない。また、場所になんらかの力を認めた点は、現
在の理論と符合するところがあり、空間把握のうえで極めて示唆的である。場所に関し
ての近代初期の考え方は、デカルトに代表されるように、位置を示す概念とされた。し
かし、彼は、場所のもつ境界性を保存してもいた。
□中心を考慮しているもの


□境界を考慮しているもの



